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湖や海に広がる未来のエネルギー、水上太陽光発電を解説

私たちの身近な湖やダム、さらには海の上にまで広がり始めている「水上太陽光発電」。
近年、世界各地で導入が進み、その注目度はますます高まっています。水面にパネルを浮かべることで、未利用の空間を活用できるだけでなく、発電効率や環境面でのメリットも期待されているのです。
今回は、この水上太陽光について、世界の導入状況から日本のポテンシャル、そして普及に向けた課題までをわかりやすく解説します。


世界で広がる水上太陽光

水上太陽光の導入は2010年代半ばから一気に加速しました。2018年には世界全体で1.6GW、2023年には7.7GWまで拡大しています。とはいえ、太陽光発電全体に占める割合はまだ0.5%程度に過ぎません。
しかし、未利用の池や湖沼、さらに海洋まで含めれば、そのポテンシャルは非常に大きく、今後の成長余地は計り知れないといえます。

特にアジア地域での導入が目立ち、世界全体の90%を占めています。その中でも中国が約半分を導入し、台湾、インド、イスラエル、日本、韓国が続きます。ヨーロッパではオランダやフランスがトップ10に入り、世界規模で広がりを見せています。


日本の可能性 ― 38.8GWのポテンシャル

日本でも、湖やダムの水面を活用した水上太陽光が注目されています。
NEDOの「再生可能エネルギー白書(第2版)」によると、日本における導入可能ポテンシャルは38.8GWと試算されています。これは原発数十基分に相当する大きな規模であり、日本の再エネ拡大において重要な役割を果たす可能性があります。

すでに各地でため池を活用した発電所が運転を開始しており、農業や地域の環境管理とも結びつく形で導入が進んでいます。


コストと普及への課題

一方で、水上太陽光には課題も存在します。米国の国立再生可能エネルギー研究所(NREL)の試算によれば、10MW規模の水上太陽光の建設コストは陸上型より25%ほど高いとされています。

特に遠隔地や海洋沖合に設置する場合、次のような課題があります。

  • 発電データの伝送コストや通信の信頼性

  • O&M(運営・保守)に専門技術者が必要

  • 塩害や紫外線などの過酷な環境による設備劣化

これらの課題は普及スピードを鈍らせる要因となっており、今後の技術革新やコストダウンが不可欠です。


水上ならではのメリット

それでも水上太陽光には、陸上設置にない魅力があります。

  • 森林伐採や大規模造成が不要

  • 雑草対策が不要

  • 水面で冷却され、発電効率が向上

  • 水の蒸発を抑制できる

  • 藻類や水草の異常繁殖を防ぐ効果の可能性

  • ため池管理の費用を賄える可能性

このように、環境保全や地域利用と相性が良い点は、水上太陽光の大きな強みといえるでしょう。


事例紹介:ドイツに誕生した大型フロート型太陽光

実際にヨーロッパでも水上太陽光の導入が進んでいます。
ドイツ・バーデン=ヴュルテンベルク州のヴァルトマッテン湖(Waldmattensee)では、7.5MW規模のLONGiモジュールを用いた水上太陽光発電所が稼働を開始しました。

  • 設置面積はおよそ3ヘクタール(サッカー場3面分)

  • 13,000枚のソーラーパネルを750基の浮体(フロート)の上に配置

  • 発電した電力は投資家Vogel-Bau GmbHの事業に活用され、余剰電力は公共電力網へ供給

湖畔には遊泳エリアもあり、訪れる人々は自然に囲まれながら再エネの安全性・環境性を実感できます。
建設を担当したM/R Energiesystemeの代表取締役 Markus Rebensburg氏は「挑戦であり、同時に夢の実現」と語り、このプロジェクトが持つ未来性を強調しました。

まさに「太陽の力を水の上で最大限に活かす」事例として注目されています。

まとめ

水上太陽光発電は、まだ太陽光全体の0.5%に過ぎませんが、今後大きな成長が期待される分野です。日本においても38.8GWというポテンシャルを活かせれば、再生可能エネルギーの新たな柱になり得ます。

ドイツでの大型事例のように、地域環境と共存しながら再エネを広げる取り組みは、これからの水上太陽光の未来を示すヒントとなるでしょう。湖や海に広がる「未来のエネルギー」が、いよいよ現実のものとなりつつあります。