
【政策解説】太陽光業界の“値上げ潮流”はすでに始まった
2026年1月9日、中国財務部と税務総局が共同で光伏(太陽光)製品の輸出税還付政策の調整を発表しました。これにより、2026年4月1日以降、中国からの太陽光関連製品の増値税輸出還付が全面的に廃止されることが決定しました。また、電池製品の輸出還付率も段階的に引き下げられ、最終的には2027年に完全撤廃されます。
この政策変更は、長期にわたり低迷していた太陽光市場に大きな変数をもたらすものであり、海外需要者にとっても価格形成や調達計画に直接的な影響を及ぼす可能性があります。
輸出還付廃止で利益率が後退
今回の輸出税還付制度の調整は、市場の想定を上回る強いインパクトを持っています。上海有色網の試算によれば、例として主流の210規格太陽光モジュール1枚あたり輸出利益が約46~51元(約1,050~1,160円)減少するとされます。
また、100万元(約2,280万円)相当のモジュールを輸出した場合、約9万元(約205万円)の税還付利益があったのに対し、今回の新政ではこの還付が完全に消失し、利益率に直結するコストが約9%引き上がる計算です。
これまで輸出還付を価格競争力として活用してきた企業にとって、この制度変更はコスト構造そのものを変えるものになっています。
上流コストの上昇も加速
政策要因だけでなく、原材料コストの上昇も進行中です。
多結晶シリコン(N型再投入材・粒状シリコン)は前月比で約9.8%~10.5%上昇
シリコンウェーハ(210RN)は約8.4%上昇
電池セルの一部大手企業は、価格が0.4元/W(約9.1円/W)を突破しており、コスト圧力に対応するため出荷調整が進んでいます
さらに、銀価格が1kgあたり19,000元(約433,000円)を越えたことで、電池・モジュール段階のコスト上昇がさらに強まっています。
業界の一般的な試算では、
銀価格が1,000元/kg(約22,800円/kg)上昇するごとに、モジュールコストは0.01元/W(約0.228円/W)上昇
シリコン素材価格が6.5元/kg(約148円/kg)上昇するごとに、モジュールコストは0.01元/W(約0.228円/W)上昇
という関係があり、2025年末の段階でこれらの要素が重なり、理論上ではモジュール価格が約0.09元/W(約2.05円/W)押し上げられた可能性が示唆されています。
価格転嫁は時間の問題
多くの業界分析では、輸出税還付の廃止による約9%のコスト差は、最終的に価格上昇で吸収されるべきだという見方が強まっています。
一部の企業はすでに価格の引き上げを始めていますが、すべてのコスト上昇が価格に反映されているわけではまだありません。
制度の背景には、中国側が「海外市場価格の理性的な回帰を促す」意図があるとされ、長年にわたり国内補助を利用した低価格競争を終える狙いも指摘されています。
国際的な調査機関も今回の調整は市場予想を上回るものであり、企業は海外バイヤーと新条件で価格を再交渉せざるを得ない状況になってきました。
最後の“低価格”調達のチャンスは短い
今回の政策は輸出通関日を基準としているため、4月1日以前に通関を完了した製品は旧税還付率が適用可能です。つまり、現在から約2か月程度が、旧条件でのロットを確保する最後のチャンスとなります。
多くの分析では、輸出税還付が廃止に向けた“猶予期間”において、海外の太陽光事業者が発注を前倒しし調達数量を増やすことが予想されるため、短期的な輸出量の増加とともに価格上昇がさらに加速する可能性があります。
4月以降は輸出量が一時的に5~10%程度減少する見方もあり、供給量が一時的に低下し価格の高止まりが進むことも懸念されています。
日本市場への示唆
これは、日本のIPP事業者、施工業者、商社、そしてプロジェクト投資家にとって、ただの中国ローカルニュースではありません。
輸出還付の廃止、原材料費の上昇、そして需給構造の変化が重なる今、この状況は太陽光モジュールの価格が高値で推移する新しい環境への転換点を意味しています。
すでに価格上昇は“可能性”ではなく、高い確率で進行中のトレンドです。
そのため、調達スケジュールの見直しと、可能な限り早期の価格確定・発注・納品手配が、プロジェクトのコスト競争力を守る上で極めて重要になります。
“脱補助金”時代の競争力とは
業界は今回のような制度変更を何度も経験しており、それによって淘汰と進化が進んできました。
単に低価格だけで勝負する時代は終わりつつあり、製品信頼性、安定供給力、長期保証、ブランド力などが、海外市場での競争力としてより重要になります。
今のうちに戦略的な調達と価格固定を進めることは、ただコストを抑えるだけでなく、世界的な価格上昇局面でのリスク回避策としても機能します。